グループを脱退した、元男性アイドルに対し、所属事務所がマネジメント契約に基づき、違約金の支払いを求めていましたが、下級審で棄却されたため、上告していた裁判の判決が、最高裁判所第一小法廷でありました。

結論としては、上告が棄却され、元アイドルの男性側の勝訴といえる判決となりました。

この元アイドルの男性は、所属事務所と専属マネジメント契約を締結した際の契約書に、事務所の承諾なしにはグループを脱退できないという条項や違反1回で200万円を支払わなければならないといった条項が規定されていたため、2020年8月に事務所との間の専属マネジメント契約を解除した際に、事務所側から、違約金の支払いを求める訴訟を提起されていました。

労働基準法第16条で、労働契約の不履行については、契約の中で違約金や損害賠償額を定めてはいけないことになっています。

しかし、アイドルの場合、通常はフリーランス(事業者)という立場であるため、そもそも労働基準法の適用対象となる「労働者」といえるかが問題となります。

形式的には、労働者とはいいにくいのですが、大阪地方裁判所は、この男性にライブやレッスンを断る自由がなく、仕事場所や仕事の時間について事務所側から拘束されていたと認定し、この男性は事業者ではなく、事務所側から指揮監督を受ける「労働者」にあたると実質的な判断を行いました。

これにより、労働基準法が適用され、契約書の違約金条項を無効として、大阪地裁は、事務所側の請求を棄却していました。

控訴審に続き、最高裁判所も、この判断を支持し、上告を棄却したため、判決が確定し、男性側の勝訴となりました。

単に元アイドルのトラブルということでなく、業界を問わず、このように使用者側から雇われているに等しいフリーランスというものが存在します。

本来、サラリーマン労働者であれば、労働基準法で保護されるような不利益な条件や取り扱いを受けても、フリーランスの場合「労働者」にあたらないため、保護されないケースもあります。

今回の判決は、このような偽装フリーランスに対する不利益な取り扱いに歯止めをかけ、場合によっては「労働者」にあたるという実質的な判断がなされることを示した点で、アイドル以外の人にも意味のある判決となっています。