アメリカでは新たな判事を選ぶ時が来た

U.S.A(アメリカ)の連邦最高裁判所の判事の人選が注目されています。

リベラル派と言われたルース・ベイダー・ギンズバーグ判事がコロナではない病気によって死去しました。

そのため新たな人選が必要となっているのです。

アメリカ最高裁判所の判事は9人ですので今までのリベラル派4に対し保守派5というのは比較的バランスの取れた構成と言われていました。

ここへ来て新たにトランプ大統領が指名したのがエイミー・コニー・バレット氏です。

エイミー氏はシカゴの連邦高等裁判所の判事をしてきた人です。

保守派と言われているため保守派6に対しリベラル派3となってアメリカが保守に傾くのではないかと言われています。

連邦最高裁判所判事の社会に対する影響

アメリカ社会にとっては大きな変化となるかもしれません。

例えばギンズバーグ氏はオバマケアに対して異を唱えた人です。

政策が良かったか悪かったかということよりも社会に与える影響は大きいわけです。

コロナについても国民皆保険が実現していればアメリカでの感染者数が変わっていたかもしれません。

このようにリベラル派から否定された政策も実現する可能性が出てきます。

アメリカ大統領の思惑

アメリカの判事の構成なんて関係ないと思う方もいらっしゃるかもしれません。

ただ日本へも影響がないとは言い切れないのです。

アメリカの外交政策や貿易政策に対して違憲判断が出るかもしれないからです。

このようにアメリカ連邦最高裁判所の判事の人選は社会に与える影響が大きく、アメリカ大統領にとっても自分の政策が実現しやすくなるか実現しにくくなるかを決める重要な人事なのです。

トランプ大統領だからではない

トランプ氏は当然保守派の人を選びます。

トランプ大統領だから強引な人事を行ったというわけではありません。

アメリカの連邦最高裁判所の歴史を見ても歴代大統領が自分の政策に都合の良い判断をしそうな人を指名してきたことは明らかです。

アメリカ司法の歴史

歴史的にはルーズベルト大統領のニューディール政策の時にまで遡れば十分かと思います。

当時人気を誇ったルーズベルト大統領ですがニューディール政策を実施しようとした時に連邦最高裁からニューディール政策を支える法律がことごとく違憲の判断を受けました。

アメリカ大統領に連邦最高裁判所判事の解任権はありません。

そこでルーズベルト大統領は最高裁判所判事を15人まで増員できることにするという法改正を考えました。

判事を取り替えることができないなら自分寄りの意見に近い判事を増やすという発想です。

結局この法案は議会を通過しませんでしたが、保守派と言われた判事の中からリベラル派とも思える判断へ転向する人が出てきて、それまでの憲法判断が変更されたのです。

これにより経済的にはニューディール政策は実施に移され、アメリカは世界恐慌を乗り越えることになります。

政治的にはこれ以降連邦制というアメリカ独特の地方分権を前提とする中央集権化が進むことになります。

これら一連の出来事はアメリカ司法の歴史上憲法革命と言われ、これ以前をオールド・コート、これ以降をニュー・コートと呼びます。

コートはスポーツをする場所でも着るものでもなく裁判所、法廷の意味です。

リベラル派、保守派だけで片付けられない

今回保守派と言われるエイミー氏が連邦最高裁判所判事に任官した場合、アメリカの政策が保守に傾くというのもうなずけるところです。

ただし、アメリカ司法の世界はそう単純ではないのです。

アメリカ大統領は自分の政策にとって都合の良い判断をしそうな人を選ぶと書きました。

これは連邦最高裁判事に指名する以前の裁判での判決内容や裁判の際に表明された意見などに基づいて判断されているようです。

連邦最高裁判事に任官するまでは確かに保守派、リベラル派と言われても無理はないという人が指名されます。

ところが任官してしばらくすると保守派と言われていた人なのにリベラル派的な判決や意見を出し始める、リベラル派と言われていた人なのに保守派的な判決や意見を出し始める事があるというのもアメリカ連邦最高裁判所の歴史にはよく見られることなのです。

この原因や理由はよくわかっていません。

このような現象が単純な合理性や多数決の欠点を補う機能を果たしてきたと言えるのではないでしょうか。

アメリカを世界のリーダ的な存在に押し上げてきた一つの要因のように思えてなりません。