非正規雇用の従業員に対して賞与や退職金を支給しなかった2件の事件について最高裁判所の判決が出ました。
最高裁第3小法廷は不支給は不合理とまでは評価できないと判断しました。
これを一般化して非正規には賞与も退職金も支払わなくて良いと考えそうですが決してそうではありません。
この判決は当該事件に関しては不支給が不合理とまでは評価できないと言っているだけです。
格差や仕事の内容によっては賞与や退職金の不支給が不合理と評価されることもありうるということになります。
ただ反対に第二審である高等裁判所では一定額を支払うべきという判決が出ていたため、あわてて賞与や退職金の定めを設けた企業もあったと思います。
今回の判決が出たので何だ払わなくていいのかと一方的に不支給に契約内容を変更すると一方的な不利益変更として法的に問題が出てくる可能生があります。
利益に変更する分には文句が出ないかもしれませんが、不利益に変更するには相手方の同意が必要と考えた方が良いでしょう。
同一労働同一賃金などと言っていますが、なかなか待遇面で同一賃金を実施することは難しいわけです。
そうでなければ正規雇用として採用していればよいだけですから。
理屈の上では退職金は給料の後払い的な性格を有すると言われています。
だとすると非正規社員にも給料の後払い分を受け取る権利がありそうですが、今回の事件では退職金は長期的な雇用について定められる制度と考えているようです。
その辺が大阪医科大学の事件では裁判官の全員一致、メトロコマースの事件では5人中4人の一致という判断につながったのではないでしょうか。
私個人としては結論には驚かないのですが、退職金が支給されなかったことよりも秘書としての時給が1000円未満という低さに驚いてしまいました。
退職金の不支給が正当化されたと喜ぶのではなく、秘書を最低賃金に近い時給で使っていたことを恥ずかしいと感じてもらいたいものです。