同性同士の婚姻を認めないことが、憲法に違反するとして争われた裁判の判決がありました。

第一審の札幌地方裁判所は原告らの国家賠償請求は認めなかったものの同性婚に対し一切法的保護与えないことは憲法第14条に違反するとして違憲という判断をしました。

同性婚を法的に認めるかどうかは非常に難しい問題です。

外国では認められている国や州もありますが、宗教的な理由などにより完全に否定されている国もあります。

日本では宗教的な縛りはあまりないため国民感情によるところが大きいと言えるでしょう。

そのうえで性同一性障害や同性愛者に対する社会の意識の変化に伴い、本人同士が結婚したなら認めてよいのではないかという意見も増えているのだと思います。

ただ婚姻の問題は法制度に関わってくるので、当人達だけの意思だけでは決着をつけにくい問題を含んでいます。

相続など財産を引き継がせることについてはもともと贈与や遺贈などの手段があるため、それほど問題がないように思います。

婚姻自体を認めるとなると、この訴訟では問題となっていませんが、養子縁組という制度があるため同性同士で子供を育てるということに議論はつながっていくと思います。

このあたりになってくると本人たちの性的指向の問題だけでなく、子供側が同性婚に対してどこまで理解できるのかという心の問題が出てきます。

これについても法的に認められていないから生じる問題についての解決策が検討されていないだけという議論もあるでしょうが、子供の心の問題は制度だけではどうにもならない部分もあります。

これに対しては異姓婚でも児童虐待などが起こっていることを考えると制度の否定理由になるかどうかという反対意見もありうると思います。

このあたりを考慮してかこの判決では同性婚を積極的に認めないのが違憲と言っているのではなく、婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないでいることは立法府の裁量権の範囲を超え憲法第14条に違反するとしているのです。

まだ時期尚早な部分があるため法律を改廃していないことが直ちに違法とはされず国家賠償請求は否定しています。

一般の人にわかりにくいのは違憲なのに違法性を否定している部分ではないでしょうか。

ここは違法性があるにしても国家賠償の請求を認めるほどの違法性はないと判断したと考えると良いと思います。

この訴訟では同性婚自体に対する判断だけでなく、違憲判断をするためには立法府の裁量にたいして裁判所が口を出さなくてはなりません。

社会科で勉強する権力分立の問題があるため、この手の問題では憲法判断が回避されることが多いのです。

地裁だから言えたとも言えるし、法律審ではない地裁だからめずらしい判決とも言えるかもしれません。

国家賠償請求は否定するという形で立法や行政に対して現実的な配慮をしつつ、世の中の議論を促す判決と言えそうです。