福岡地方裁判所で審理されていた窃盗事件の裁判が裁判の途中で、被告人が釈放されてしまいました。

原因は警察の手続き上のミスによるものです。

どういうことかというと刑事訴訟法では公訴が提起された日から2ヶ月以内に起訴状の謄本を被告人に送達しなければ公訴提起の効力が失われると定められています。(刑事訴訟法第271条第2項)

この起訴状の謄本は裁判所が送ります。

今回、この事件の被告人は警察署に勾留されたまま起訴され、裁判中だったのですが、裁判所が送った起訴状の謄本が警察のミスにより被告人に届いていなかったのです。

それが裁判中にわかり、判決に至らず釈放になってしまいました。

起訴状の送達ミスにより、釈放されるというのは今回が初めてのようです。

なぜ、このような規定があるかというと被告人に審判される内容を知らせて訴訟上の防御の準備をさせるためです。

そんな決まりがあるなら、起訴状が送達されないように逃げ回っていればよいのではないかと考える方がいらっしゃるかもしれませんが、そうはいきません。

居場所がわからなくならないように逮捕されたり勾留されたりするからです。

仮に身柄を拘束されない在宅事件で正式起訴された場合でも、裁判所からは特別送達という方法で送達されますし、正当な理由なく送達を拒んでも、差し置くことで送達が完了してしまいます。

それに被告人となっている場合は身柄を捜索されるのがオチです。

今回、どのような事情で被告人に起訴状の謄本が届いていなかったのか詳細は公表されていないようですが、手続きの内容から推測すると、単に起訴状の謄本を渡し忘れていたとか、そういう単純なミスではないかと思います。

早良警察署の署長は「重く受け止め、心からお詫び申し上げます。県警本部と連携のうえ、再発防止に取り組んで参ります」と謝罪のコメントを出しています。