多数当事者の債権債務の関係についても多くの改正がなされています。

債権や債務が、可分であるか不可分であるかの区別も、不可分債権(民法第428条)や不可分債務(民法第430条)について法定され、主観的な基準ではなく、客観的に性質上、可分であるか不可分であるかにより区別されることになりました。

これまで規定のなかった連帯債権についての規定も設けられました。(民法第432条~民法第435条の2)

多数当事者の債権債務関係に関する理解の1つの大きな山は連帯債務になると思いますので、今日は、連帯債務について書きます。

民法を勉強されたことがある方なら、連帯債務者のうちの1人について生じた事由が、他の連帯債務者について影響するかどうかを勉強したことがあるのではないかと思います。

資格試験にも出題されるため、絶対的効力事由や相対的効力事由として暗記された方も多いと思います。

これらの内容が大きく変わっています。

結論から申し上げると今回の改正で絶対的効力事由、つまり他の連帯債務者についても効力が生じるとされる事由は制限される方向で改正がなされています。

弁済や、これに準ずる供託、代物弁済といった事由が絶対的効力事由とされることは問題ないと思います。

旧法ではこれら以外にも多くの絶対的効力事由が存在しましたが、今回の改正で、更改(民法第438条)、相殺(民法第439条)、混同(民法第440条)に限定されました。

旧法下で絶対効が認められていた、消滅時効、免除、履行の請求は相対的効力事由に変更されたことになります。

消滅時効についての変更は、時効についての改正が影響したとも言えますし、連帯債務における消滅時効の取り扱いも含めて、時効制度が大きく変わったと評価することもできます。

時効完成の猶予のきっかけになる履行の請求も相対的効力事由とされることを考えると、消滅時効に関しては当事者ごとに相対的に考えていくという改正法の姿勢が読み取れると思います。

細かな部分でいうと、他の連帯債務者が債権者に反対債権を持っている場合、他の連帯債務者は相殺を援用することで、その者の負担部分についてのみ債務を免れるとされていましたが、履行を拒絶できるという内容に変更されました(民法第439条第2項)

つまり他の連帯債務者の有する債権では、相殺を援用できないことになります。

この他、旧法下では位置づけが不明確だった不真正連帯債務では、自己の負担部分を超えて共同の免責を受けた場合に他の連帯債務者に求償できるとされていました。

今回の改正で連帯債務に不真正連帯債務も含まれる事になりましたが、求償の条件は、自己の負担部分を超えなくても負担割合に応じて、求償できるという内容に統一されました。(民法第442条第1項)