旧法でいう売り主の担保責任について書きます。
旧法下での制度を確認しておくと、売買の目的物に隠れた瑕疵がある場合、売り主は担保責任を負うとされ、この責任は特定物に限られるという考え方がありました。
以前書いた特定物ドグマというやつです。
この場合、不特定物の場合は債務不履行の規定により処理され、特定物の場合は過失を要求せずに瑕疵担保責任を法律が特に認めた法定責任と考えられていたのです。(法定責任説)
これに対し、売り主の担保背金も債務不履行の位置場合に過ぎないとする契約責任説がありました。
このような対立があった部分について、改正民法では、直接規定のなかった債務不履行の不完全履行の場合を契約不適合責任として法定し、売り主の担保責任について、「目的物」の契約不適合責任として規定しました。
この「目的物」についての規定と同様の規定が「権利」についても規定されています。
まず、目的物の場合から説明すると、改正法により旧法と同じような責任が追求できるのは、目的物に瑕疵がある場合に、目的物が引き渡されたときです。
引き渡されていない場合は債務の本旨に従った履行がない場合の債務不履行として処理されます。
では目的物が引き渡された場合にどうなるかというと、ほぼ旧法と同じような責任が追求できることになります。
目的物に瑕疵がある場合、履行が追完可能であれば債務者は履行の追完請求ができます。(民法第562条)
追完には代替物の請求と瑕疵の修補請求が考えられます。
追完されない場合は、代金の減額請求ができます。(民法第563条)
これらの責任によっても瑕疵が残る場合、債務不履行一般のケースと同様、損害賠償請求や契約の解除ができます。
代金が減額された場合には契約の解除ができませんが、損害賠償請求の場合は、債務不履行一般の規定としての処理なので、損害賠償請求する場合も契約を解除することはできることになります。
これらの責任は、不適合があることを債権者(目的物についての)が知ってから1年以内に債務者に通知しなければ行使できません。(民法第566条)
時効についての規定で処理されるのではなく、売買についての特則が定められていることになります。
これに対し損害賠償請求は債務不履行一般の規定により処理されるので、権利の行使期間は、民法第566条ではなく、時効の規定により処理されます。
ただし、民法566条は目的物の種類又は品質に関する不適合に関する規定です。
種類又は品質に関する瑕疵の場合には、債務者は一旦義務は履行したと考えているため、債務者を一定程度保護するための規定なのです。
そのため、目的物の数量不足や権利についての瑕疵については適用されません。
更に競売については種類又は品質についての瑕疵について、担保責任にあたる規定の適用自体がありません。
競売も売買ではあるのですが、所有者の意思によって契約により権利が移転するわけではないため、債務者に対して責任を追求する基礎が欠けるからです。
期間の問題ではなく、目的物の数量不足の場合の責任については、先に書いた代金減額請求と損害賠償請求や解除ができることになります。
解除については、その数量では契約目的が達することができない場合に限られます。(民法第542条第1項第3号)
数量と言うと数字で客観的に決まるように思えますが、契約上の数字と表示がズレている場合でも、契約内容の解釈によっては、数量不足にあたらない場合が出てくる点は旧法と同様です。