今回は民法の改正法についての記事です。
請負契約について書きます。
請負契約は、通常仕事完成後に報酬の支払請求権が発生します。
ただ旧法下で判例は工事の内容が可分で、当事者が既施工部分について利益を有するときは、特段の事情が無い限り、既施工部分の解除権を制限していました。(最判昭和56年2月17日)
つまり、工事の内容が可分で、注文者も利益を得ていれば、特段の事情がない限り、請負人は既施工部分について、報酬の支払請求権を有することになります。
改正法は、この判例理論を条文化して、一定の要件の下に、請負人に注文者が受ける利益の割合に応じた報酬支払請求権を認めています。(民法第634条)
以前は、未完成建物の所有権の帰属について、加工の規定により、所有権の帰属が決まると考えられてきましたが、この民法第634条が規定されたことにより、有力説であった注文者帰属説も条文上の根拠を得たことになります。
民法第634条は、未完成の建物についての所有権の帰属を請負人と解するか、注文者に属すると解するかにかかわらず、適用されると考えることができます。
そうであるとすれば、所有権が請負人に帰属すると解しても、自由に処分できるという性質のものではなく、注文者が完成部分についての報酬を支払えば、注文者のものになるし、元々注文者帰属説を取れば、注文者のものなので、端的に注文者に帰属すると解することにも合理性が出てきているのです。
通常法改正により、この手の論争に終止符が打たれるというのが相場なのですが、改正により、より対立が深まる可能性も出てきています。
場合によっては、加工の規定と民法第634条の使い分けという議論も出てくるかもしれません。
今日はこの辺で。
次回は、旧法の請負人の担保責任にあたる規定について書きます。