金融庁に出向中の裁判官が、業務で知ったTOB(株式公開買い付け)の情報をもとに行った株式の取引が、金融商品取引法が禁ずるインサイダー取引の疑いがあるとして、証券取引等監視委員会が、強制調査に入りました。

以前とは異なり、現在は司法制度改革により、裁判官が各省庁に出向することがあります。

裁判官が出向する際は、大体、裁判官としての任を解かれ、検察官に任官された後、各省庁へ出向するというのが相場です。

どちらにしても、公務員であり、法曹であることに変わりありません。

インサイダー取引は民間人でも禁じられていますから、インサイダーにあたる場合はもちろん、あたらないとしても、企業情報に触れる公務員が、疑いをもたれる取引をしていること自体が問題です。

この出向中の裁判官も、裁判官としての職務のために出向しているわけですから、金融商品の取引にかかわる犯罪についての知見を広げるというのも出向目的の1つに含まれるはずです。

それにもかかわらず、インサイダー取引の疑いがもたれている時点で、非常に不適切な行動をとったといえます。

この裁判官は、大阪地方裁判所の判事補で、2019年に任官しています。

大体、左陪席5年ぐらい、右陪席5年ぐらいを経験し、裁判長になっていきます。

この裁判官は、左陪席を5年ぐらい経験したところだと思いますので、これから特例判事補や、裁判長になっていくべき立場にあったはずです。

裁判官には身分保障が認められていて、弾劾裁判でなければ、罷免されないことになっています(憲法第78条)が、この裁判官は、現在裁判官の任を解かれて、出向中ですので、裁判官の身分保障は及びませんし、行政機関も懲戒処分を行えることになります。

そのため、インサイダー取引にあたれば、普通の公務員として懲戒処分を受ける可能性もあることになります。