当初のフランス(フランス共和国)の話とは、ズレてくるのですが、昨日の読売新聞の記事についての続きを書きたいと思います。

それまで、首相官邸には最高裁判所の裁判官の候補者が1人しか示されてこなかったのに、複数人候補が挙げられるようになったという話です。

重要なことなので、少し補足したいと思います。

候補者が、1人の場合はその人を任命するか、しないかの話になりますが、候補者が複数いる場合は、より政府に都合の良い人が選ばれる余地が生まれます。

このような手法が、読売新聞記事の中では、アメリカ(U.S.A)のトランプ政権よりも先に、日本で行われていたということに、アメリカ人から指摘を受けた日本の学者がショックを受けたという話で出てくるのですが、これはあくまで、トランプ政権より先だったというだけです。

このような手法は、アメリカでは、古くはニューディール政策が実施された頃から発想としては存在します。

世界恐慌による不景気を打破しようと、アメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領が、経済を立て直すために、経済学のケインズ理論に基づくニューディール政策を実施しようとしました。

これに対して、連邦最高裁判所の判事が、ニューディール政策を実施する法律に、ことごとく違憲判決を出したわけです。

アメリカ大統領には、連邦最高裁の判事を更迭する権限はありませんが、新しい判事を指名する権限はあります。

フランクリン・ルーズベルト大統領は、連邦最高裁の人事改革法案として、70歳になっても退官しない判事1人に対し、大統領が新たな判事を1人追加できるようにすることで、求める判決が出るような司法体制を整えようと画策しました(コートパッキング・プラン)。

しかし、この法案は成立せず、フランクリン・ルーズベルト大統領の画策は失敗したかに見えました。

ところが、この後連邦最高裁判所の中の中道派の判事が、ニューディール政策関連法について賛成に転じ、賛成派が多数派を占めるようになりました。

更に、その後、保守派の判事が次々に引退し、ニューディール政策を実施するための法律は、結局、合憲ということになったのです。

ですから、政府に都合の良い裁判官を送り込むという発想自体はこの頃からあるわけです。

これ以降、アメリカの連邦最高裁判所については、時の政権に都合の悪い判決が出た後は、大統領によって政府に都合の良い考えを持つ判事が指名されるということが、事あるごとに行われています。

これに近いことが、日本でも可能になっているということです。

日本では、最高裁判所により、法令が違憲と判断されることは少ないですし、国などの行政による処分が違憲とされることも多くはありません。

しかし、政府に都合の良い裁判官が任命される余地ができるということ自体、司法権の独立が危ぶまれます。

特に、最高裁判所の人事を気にして、それ以外の裁判官が、個々の裁判において下す判決に影響が出てくる可能性も出てきてしまうのです。

更にこれに加え、日本銀行の金融判断への干渉や、許認可や放送法を盾にしたテレビ局への圧力とも合わさると、アメリカで問題となっているディープステートの存在が、日本でも危ぶまれる事態になってきます。