月の土地の所有権の売買という話を聞いたことがあります。

これについて書いてみたいと思います。

まず月の土地は条約上どこの国のものでもないということになっています。

そうすると私人が取得できるかということになりますが、日本法について言えば無主物は先占つまり先に占有したものが権利を取得することになっています。

ただし、月は日本の領土ではないので日本法が適用されるわけではありません。

そのため先に月に行って占有してもその人のものになるわけではありません。

法律とは別に実効支配によりそれが権利として後から認められる可能性はあります。

もし仮に、誰かが所有権を取得したとして、それを売買するのは地球上です。

特に日本で売買するなら売買契約については日本法の適用があります。

日本法で売買契約の目的物には
1 確定性
2 実現可能性
3 適法性
4 社会的相当性
などの要件を満たす必要があります。

このうち1については月の土地について登記のような制度がないのでどの部分を取得するのかということも不明確です。

月の映像などからどの部分を売るか特定できたとして、どのように占有するかということと、どのように引き渡すかということを考えれば、今のところ2の要件を満たしそうにありません。

世界各国法律は日本と同じではありませんが、2の要件については似たようなものだとお思います。

世界にはいろいろな国があるので、自分の国では売買可能だと主張する人かも知れませんが、権利というものは最終的には国家の強制力で実現されるものです。

今のところ月の土地を強制的に引き渡せる国はないと思います。

仮に法的に取引可能な国があったとしても最終的にはお金の問題となります。

今のところ、月の土地の権利を取得することは難しそうです。

ただし、宇宙旅行ができるようになると月へ行き来することができるようになるので、この2の要件を満たすことができるようになる時代が来るかもしれません。

つまり実現可能性がないとは言えなくなってくるのです。

このように法律は時代と共に変化するものなのです。