今年ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんが化学の世界に興味を持つきっかけになったとして紹介されたのが「ロウソクの科学」です。

著者のマイケル・ファラデーが1860年に行ったクリスマスのための連続講演が元になっています。

吉野先生だけでなく2016年にノーベル医学生理学賞を受賞した大隅良典先生もお兄さんから贈られ研究者を志すきっかけになった本として一度話題になっている本です。

ファラデーはU.K(イギリス)の研究者なので元は英語です。

同じ本でも読む本の翻訳により異なる印象を受けるかもしれません。

タイトルの「ロウソクの科学」も原典では「ロウソクの化学史」という表現でした。

これは日本ではじめに出た翻訳書が「ロウソクの科学」と翻訳しそれが浸透してしまったことが理由のようです。

高校までの英語を勉強した人は原典にチャレンジしてみるのも良いかもしれません。

私は翻訳の専門家でも化学の専門家でもありませんが独断と偏見で何冊か紹介してみたいと思います。





「ロウソクの科学」が教えてくれること 炎の輝きから科学の真髄に迫る、名講演と実験を図説で (サイエンス・アイ新書)

カラー図説が入っているのが特徴です。

翻訳は尾嶋好美さん監修がポリアセチレンの研究でノーベル化学賞を受賞した白川英樹さんです。

日本語は読みやすいですがその分逐語訳的ではありません。

今の日本人が原文を書いたような文章だと思って良いでしょう。

読みやすい日本語で内容がわかれば良いという人におすすめです。

タイトルも原題から少し変えてあるようにこの本自体は完訳ではなく抄訳です。

出版社自身も解説書と位置づけているようです。

タイトルや帯の表現どおり図説でわかりやすくしてあるという言い方もできますし、わかりやすくしてしまったという言い方もできる本です。






ロウソクの科学 (講談社文庫)

翻訳者は吉田光邦さんです。

日本語は読みやすく英語や講演の格調のようなものが伝わる文体になっています。

ファラデーの講演の雰囲気も読みたいという方におすすめです。

※この本のリンク先だけ電子書籍のKindle版のため注意してください。

リンク先のKindle版は安く手に入りますがアマゾンではこの記事を書いている時点で紙の本で入手できるものは中古本で値段が上がっているのが残念です。

個人的には好みの翻訳であるためあえて紹介しました。

アマゾンの中古本でも買う価値がある本だと思いますが古書店などで安く購入できる方は買いだと思います。






ロウソクの科学 (岩波文庫)

翻訳者は竹内敬人さんです。

本の見た目は古めかしいですが日本語は読みやすい方だと思います。

英語の原典を読むときに使う本として向いているかもしれません。

1956年版は矢島祐利さんの翻訳です。
こちらは全く読んでいないのでノーコメントです。






ロウソクの科学 (角川文庫)

翻訳は三石巌さんです。

一番表紙はとっつきやすそうですが日本語は翻訳っぽい表現になっています。

逐語訳的な翻訳を試みているようですが訳として選択している日本語に微妙な印象を受けるものがあります。



今回ご紹介した他にも漫画版や様々な翻訳が出ているので読み比べてみるのも良いかもしれません。