以前このブログの記事で映画「宮本から君へ」という作品の出演者が麻薬取締法違反で逮捕されたことをきっかけに、内定していた助成金の交付が受けられなくなったことに対して、この作品の制作会社が助成金の不交付の取り消しを求めた裁判についての記事を書きました。

第1審としては原告側である制作会社側の勝訴ということになりました。

その中では確定ではないものの助成金の交付が一度は内定していたことなどが判決に影響しているのではないかということを書きました。

理由としても公益性の観点から取り消すという理由では多義的で抽象的すぎるという判断だったのだと思います。

これに対して第2審である東京高等裁判所は第1審を破棄し、被告側勝訴の判決を出しました。

助成金の取り消し決定は、薬物乱用を防止するという公益性に基づくもので、芸術価値を理由にするものではないから、芸術的文化的価値を軽視したことにはならないという判断のようです。

第1審に対して「公益性」の内容を具体化して認定しています。

公益性の判断をどちらで捉えるかは両方ありうるのだと思います。

裁判所の判断として利益衡量を行う際に、不交付に対して十分な理由があったか、不交付を決定する側とされる側の、どちらの利益をどれだけ重視するかによって結論が分かれてしまう例と言って良いでしょう。

原告側は一度勝っているだけに上告するのではないかと思います。

ただし、以前も書きましたが日本の裁判制度で三審制が採用されているからといって、必ず上告できるわけではありません。

上告できるだけの憲法問題を含んでいるかという判断がなされます。

もっとも、芸術作品に関わる問題だけに上告の利益は認められる可能性があると思います。