以前このブログの「諫早問題に見る三審制」という記事で書いた裁判に決着がつきました。

この裁判では、最高裁判所が審理を福岡高等裁判所に差し戻していました。

差し戻し審では、漁業権は一度消滅しても再び免許が与えられる可能性があるので、開門請求権が認められる可能性がある事を前提に審理し直しましたが、再び開門を認める判決の効力を無効とする判断をしました。

この戻し審に対する上告を最高裁判所が棄却する形で決着がついたのです。

これにより諫早湾の開門は、ほぼ難しい状態になりました。

この裁判では漁業関係者が起こした開門を求める裁判と農業関係者が起こした非開門を求める裁判で異なる判決が出ていました。

判決が確定していたので、国が確定判決の効力を無効とする裁判を提起していたのです。

異なる2つの裁判で真逆の結論が出てしまったことが事態を複雑にしていますが、判決の効力は口頭弁論終結時を基準時としますので、後の判決が優先すると解釈するなど統一的に判断することはできなかったものかと思います。

一度確定した判決の効力を覆せるなら、裁判に対する信頼が揺らいでしまいます。

今回の裁判は裁判制度そのものの根幹にかかわる問題であったと言ってよいでしょう。

今回の裁判では和解が勧告されていましたが、結局国がこれに応じることはありませんでした。

同様の事案が純粋な民事裁判や刑事裁判で起こった場合に、確定判決を争っても、同じような判断がなされることはあまり無いのではないかと思います。