日本国憲法では司法権の独立ということが謳われています。

司法権が、立法権や行政権から干渉を受けずに独立して裁判するという意味もありますが、同じ司法権内部でも干渉を受けないという意味もあります。

この他、司法権の独立を確保するために、裁判官の身分保障のための制度があります。

その1つが裁判官の報酬を在任中に減額することを禁止(憲法第80条第2項)する制度です。

転勤する中で地域手当の減額により、給与が減ったのは、裁判官報酬の減額を禁止する規定に違反するとして、差額分の支給や国家賠償を求めて、現職の裁判官が訴えを提起することがわかりました。

この裁判官の主張によれば、大阪高等裁判所、名古屋高等裁判所、津地方裁判所と異動する中で、2021年から2023年にかけて約240万円給与が減ったと主張しています。

地域手当部分なので、減額が禁止されている報酬にあたるかどうかは微妙ですが、不満があるなら堂々と主張した方が良いと思います。

世間では訴訟で勝てなかったらどうするのかとか、手当分ぐらいしょうがないじゃないかなどの意見はあると思いますが、先に書いたように裁判官の身分保障にも関わる問題です。

裁判官の身分保障ということでは、最近あった岡口元判事の弾劾裁判でも、岡口判事が罷免されました。

こちらは身分を保障するための弾劾裁判で出された判決なので、問題ないようにも思えますが、職業裁判官でない人が裁くので、運用の仕方次第では、司法権の独立を危険にさらしかねません。

いずれの事件も裁判官の身分保障が危ぶまれる事案です。

事は1人の裁判官だけでなく、その後の他の裁判官の仕事にも影響を与える可能性があります。

現に弁護士に対するアンケートでは、裁判官に萎縮的な効果を及ぼすのではないかという意見が出ていました。

裁判官による労働争議行為などというのもほとんど聞きませんので、堂々と訴訟で争ってもらいたいと思います。

ただ、この事件を担当する裁判官は、自分たちの収入面に関する争いを裁くことになるので、どこまで客観的な判断ができるか試されることになり、それはそれで変なプレッシャーがかかりはしないかと心配してしまいます。