前回保証について書きました。
保証人が、債務を弁済した場合に主たる債務者に求償できるのですが、この部分は改正法の内容がどうというより条文を見失い、テキスト(基本書)に書かれている内容を確認しようとして条文を引くとかえって混乱するという珍しい箇所なので回を改めました。
どういうことかと言うと、テキストに書いてある内容は理解できない程難しいことを書いているわけではありません。
条文を引かない人もかなりいると思いますが、真面目に勉強する人が条文を引くとかえって混乱するのです。
例えば、多数当事者の債権債務関係の条文がある箇所を参照し、保証のあたりを読んでみます。
そして、民法第459条の2を見つけ第1項で「弁済期前に債務の消滅行為をしたとき」という表現を見つけ混乱するのです。
弁済期後に、債務を履行した場合は求償できないのかなどと考えてはいけません。
解説してみたいと思います。
実は、保証では特別の規定がなくても、債務を履行した保証人が求償できる根拠が存在します。
まず、委託を受けた保証人の場合は、委任事務の処理費用(民法第650条)として、委託を受けない保証人の場合は、事務管理の費用(民法第702条)として、それぞれ求償が可能なはずなのです。
「委任」や「事務管理」という民法の他の制度を根拠に、その費用として求償できるのです。
ただ、求償は保証制度につきものなので、これらの規定の特則として、改めて、委託を受けた保証人の求償権として民法第459条が規定されています。
この規定では、求償権が発生するのは、債務を消滅させる行為をしたときなので、弁済期の前後を問いません。
そして、求償できるのは、カッコ書きがあってわかりにくいのですが、支出額と消滅した主債務の額のうち低い方の額となります。
この規定の後に、弁済期前の弁済に関する規定を設け、委託を受けた保証人が主たる債務の弁済期前に債務を弁済した場合には、無条件に求償を認めると、主たる債務者の期限の利益を害することになるので、求償できる範囲を弁済時に「現に利益を受けた限度」に制限しているのです。(民法第459条の2第1項)
これを受け、委託を受けない保証人の求償の範囲として民法第462条第1項で、民法第459条の2第1項を準用しています。
続けて、民法第462条第2項では、委託を受けない保証人が主たる債務者の意思に反して保証した場合の求償の範囲について規定されています。
ここまでを合わせて読むと、民法第462条第1項は、委託を受けない保証人が、主たる債務者の意思に反しないで保証した場合の規定ということになります。
すると今度は、委託を受けた保証人の場合は主たる債務者の意思に反する場合と、反しない場合で、規定を分けなくていいのかという疑問が湧きます。
これについては、委託を受けた保証人の場合は、主たる債務者から委託を受けているので、主たる債務者の意思に反して保証するという状態が観念できないのです。
以上をまとめてみると、保証人が求償する場面で委託の有無を問題にするのは、保証の性質が「委任」であるか「事務管理」であると見るかによって請求できる範囲が異なってくるからです。
更に、主たる債務者の意思に反して保証したかどうかによって、本来の債務の部分について、返す範囲を制限しているのです。
このような内容の規定が、委託を受けた保証人と委託を受けない保証人の場合、主たる債務者の意思に反して保証した場合と意思に反しない場合、保証人が弁済期前に弁済した場合と弁済期後に弁済した場合の、それぞれがきれいに対応する形で規定されていないので、混乱の元となっているのです。