ブログで民事のカテゴリーを新設しました。
なぜ民事法務の業務を行っていることをこれまであまり強調してこなかったかというと、民事法務をやりたくないということではなく他に理由があります。
紛争性のあるものに関わることができないだけでなく、後から紛争性が出てくるものについても関わりにくいという事情があるからです。

民事法務では個人のお客様が中心になります。
個人のお客様の場合、行政書士の業務範囲をご存知の方もいればご存じない方もいらっしゃいます。
行政書士の業務範囲としては紛争性のあるものに介入するわけにはいきません。
行政書士が紛争性のある案件に関わると弁護士法に違反する可能性が出てきます。
そのため、ある程度お客様やその案件を見極めないと受任すること自体が違法になってしまう可能性があるのです。

自分の方だけでコントロールできる問題であればそれほど気にすることもないのですが、個人のお客様からの仕事であると、当初は行政書士業務として問題ないとしても、後から紛争性が出てきてしまうことがあるのです。
こうしたケースでは自分だけで問題をコントロールできない可能性があり、積極的に仕事を受けにくい事情があります。

紛争性に関わる業務の例としては

交通事故の示談や保険の等級認定の仕事があります。
交通事故の示談では当事者で示談が成立していれば、示談書の作成はできます。
しかし、この内容で示談が成立していると言われて書類を作成したら相手は納得していないということになると問題が出てきます。
そのため、必ず両者に合意の内容を確認しなければなりません。
これは、離婚協議書の作成などでも同様の問題が生じます。
どちらも合意の内容がきちんと決まっていれば示談書や離婚協議書を行政書士が作成することは全く問題ありません。

交通事故の等級認定では行政書士からアドバイスを出して本人が保険会社と交渉することは可能ですが、行政書士が直接交渉してしまうと、これも問題になります。
等級認定の書類自体を作ることは問題ありません。

更に、難しいのは労働問題です。
労働法上の問題自体は、相談にのって会社側に出す内容証明などを作成することはできますが、その際に会社側に違法行為がある可能性を相談者に指摘したとします。
ここまではあまり問題ありません。
ところが、その後会社と話をするうちに相談者が行政書士が違法だと言っていたというようなことを会社に話すこともあるのです。
これは行政書士から言質を取ろうとする相談者に見られる傾向です。
相談者の方は悪気はないのだと思いますが、法的な判断に自信がないということではなく、こういうケースで後から紛争性が出てくることがあるのです。
会社側は引き下がることもありますが、争うとなると弁護士が出てきます。
そうすると相手方は弁護士が代理人、相談者の方は行政書士というように、後から紛争事例に行政書士が関わっているような構図ができあがってしまうことになります。
こうなると職域としてこれ以上その案件に関わることができません。
弁護士が上とか、行政書士とどちらがその法律に詳しいかとかいう問題ではありません。
その法律に詳しかったとしても職域としてできない仕事になってしまうのです。

もちろん、民事法務に関わる行政書士はこの辺に注意して業務にあたります。
ですが、紛争性が出てくる可能性があるものについては、はじめから弁護士に相談すべきなのです。
それを前提に紛争性のないものについては行政書士をうまく活用してください。

お客様の方で行政書士が何をどこまでできるかを判断できる必要はございません。
まずは相談してみることをおすすめします。
相談の際に何をどこまでできるかを行政書士が説明できているかどうかを依頼するかどうかの基準にされてはどうでしょうか。
何をどこまでできるかをきちんと説明できない人には頼まない方がよいということになります。