昨日書いた記事「自分で申請すべきかどうかの判断材料も提供していきます」のシリーズの初回は会社の設立にしたいと思います。

会社設立を自分で申請する場合

自分で申請することを本人申請と言います。

会社の設立で本人申請に向いているのは既に会社を設立したことがある方です。
ある程度内容がわかっているので手続きを進めることは可能かもしれません。
司法書士試験の受験生として商業登記を勉強したことがあるという方も自分で手続きすることが可能かもしれません。

注意点としては過去に手続きをしたことがあったり勉強したことがあっても商法や会社法は法律の中でも頻繁に改正があるため自分が知っている内容から変わっているということがめずらしくないことです。
この辺を自分で調べる自信があれば取り組んでみてもよいかもしれません。

それから注意点として手続自体が可能ということと事業をする上でその内容でよいかということは別だという話をしたいと思います。

例えば自分で会社設立を行う場合、定款なども書籍やネットの情報をもとに作成して申請することになると思います。
当面会社の事業の目的として必要なことが書いてあれば手続きは通ってしまいます。

しかし、手続きが通ってしまうから気づかないことがあるのです。

通常起業する人は会社設立後の事業展開なども考えている場合が多いと思います。
一方法務局の人間は一度申請すると会社を設立しようとしている人が設立後にどのような事業展開を考えているかなどという事情を聴取したりはしません。
そのため最低限必要なことが書いてあれば設立できてしまうので会社設立後に別の事業を行おうと思うと、できないという事態が起こりえます。

もっと危険なのは自分で設立手続き自体をしてその時点で全て終わっていると思っているので、新しい事業を行えない状態だと気づかないことです。(気づいていれば定款に書いているはずですから)

結局定款に書いていない事業を行おうと思えば定款の目的を変更することになりますが、定款の目的の変更にも費用がかかります。
この時点で士業に依頼するのであれば、はじめから士業に依頼したほうが事業展開についてのアドバイスも貰えたということが起こり得るのです。

次に許認可業務についてです。
会社を設立後に許認可業務を行う場合は許認可を取得することになりますが、会社の設立を自分でしようと思う方は許認可についても自分で申請しようと思う方が多いのではないでしょうか。
自分で申請して許認可を取得できれば問題はありません。
しかし途中できないと我々の所に依頼が来ることになります。
この時点で会社の定款を見ると許認可業務の内容がきちんと定款に書かれていないということがありうるのです。
先程書いたように法務局の人間は会社設立後にどのような許認可を取得するかについては関知しないので、設立できなかったり、定款を変更するように注意されるなどというのはむしろ例外なのです。
このような場合も許認可を取得するには定款変更が必要になります。

このあたりが自分で申請する場合のリスクということになります。

士業に依頼する場合

自分で申請しないとなると依頼するのは士業です。
会社の設立手続きの中心をなす商業登記は通常司法書士が行います。

司法書士以外で会社の設立手続きを格安で行っている税理士事務所などがあると思いますのでこれについて書いてみたいともいます。
税理士は通常商業登記を行うことができませんので、行っているとすれば司法書士資格も持っているか、自分の所が窓口になって外注しているというのが実情です。
なぜ税理士事務所を通すと会社の設立が格安で行えたりするかというと会社設立後の税務申告の顧問業務とセットになっていることが多いからです。
会社の設立手続自体は安くても20万円から30万円ぐらいはお金がかかります。
これが格安で行えるのはお金がかかっていないのではなく、税理士がこれらのお金を負担してもその後の顧問業務が得られればそちらの報酬で充分料金が回収できてしまうからです。
例えて言うと通信料金で稼げるのでスマホの本体を安く提供するような感じです。
もちろん異なる仕組みを構築している事務所もありますが仕組みが多少異なるぐらいです。
安く手続できるというのは本当であることが多いため会社設立後の顧問税理士を探す手間が省けると思う方は依頼してみるのもよいかもしれません。

次に行政書士ですが行政書士は定款などを作成することはできますが商業登記を行うことは税理士同樣できません。
そのため会社設立を行おうと思えば依頼者が自分で司法書士を探すか行政書士の紹介か、提携先の司法書士事務所に依頼することになります。

行政書士ははいじめに相談する相手として心理的なハードルが低いのがよい点かもしれません。

最後に司法書士自体に直接依頼することが考えられます。
複数の士業が関わって費用がかかることもあれば、単独の司法書士に依頼したのにそちらの方が費用が高いということもありえます。

必要に応じてどのような体制の所に依頼するか検討しましょう。

士業に依頼するメリットは自分で申請する場合のリスクを避けることができることや会社設立後に役員変更や組織変更など別の手続きをする場合にもアドバイスを貰えることなどです。