以前定められていた、時効の中断には一定の事由が発生することによりそれまで進行していた時効期間が意味を失い、新たに時効が進行する場合(前者)と,ある手続きが進んでいる間は時効が完成しない場合(後者)の両方を含んでいました。

改正法では前者を時効の更新として定め、後者を時効完成の猶予として規定しました。

時効中断事由として定められていた事由もそれぞれの事由として振り分けられています。

ただし、権利についての協議を行う旨の書面による合意など、以前は無かった事由も新たに設けられました。

規定の仕方としては、独立の条文で、「時効の完成猶予及び更新」(民法第147条、民法第148条)という定め方、「時効の完成猶予」という定め方(民法代149条乃至民法第151条)、「時効の更新」(民法第152条)という定め方の3通りの定め方があります。

完成猶予と更新の両方が規定されている場合は、時効が完成しない期間があって、その期間が終了すると新たに時効が進行するという内容になります。

完成猶予や更新で、実務でよく使いそうなのは、裁判外で催告(民法第150条第1項)をして、6ヶ月間完成を猶予しておいて、その間に裁判上の請求を行い(民法第147条第1項第1号)時効の完成を猶予するというものです。

このように複数の事由を組み合わせることもできますが、裁判外の催告を繰り返して、6ヶ月ずつ猶予して消滅時効の完成を先延ばしにしていくという方法は認められていません。

更に確定判決などにより、その権利が確定した場合は、その裁判が終了(判決が確定)したときから新たな時効が進行することになります。(民法第147条第2項)

以前、時効の停止という制度がありましたが、これは天災が発生した場合や制限行為能力者が能力者となった後又は新たに法定代理人が就職(就任)した場合などに一定期間時効が完成しないという制度でした。

ただ「停止」という言葉から、現在の「更新」のように、また進行を始めるのではないかという誤解も生じやすかったため、改正法では停止に該当していたケースも時効の「完成猶予」に含め、猶予の期間を3ヶ月と定めています。

まとめると、以前の時効の「中断」は「完成猶予」と「更新」に別れ、そのうちの「完成猶予」には、以前規定されていた「停止」も含まれるというように改正されたことになります。

今回で時効についての記事は最後です。