今日の改正民法の記事は、弁済についてです。

今回の改正は債権法が中心になりますので、これまで存在していた制度についても改正がなされています。

弁済は、債務を履行することを意味しているので、債権債務の消滅原因の中心的なものですが、これについてもいろいろと改正がなされています。

まず、第三者弁済についてです。

旧法では、「利害関係を有する第三者」が、第三者弁済をすることができるとされていて、法定代位については「正当な利益を有する第三者」かどうかが基準となり、表現にユレがありました。

これを民法第474条と民法第500条で「弁済をするについて正当な利益を有する者」という表現に統一しました。

第三者弁済についてはこの記事に書いていること以外にも論点はあるのですが、改正部分で注意しなければならないのは次の点です。

まず、第三者は債務者の意思に反して弁済できないのでが原則です。

例外として債務者の意思に反していることを債権者が知らなかったときは、第三者が債務者の意思に反して行った弁済も有効となります。(民法第474条第2項但し書)

債務者の意思に反して弁済するという強引な態様で弁済を行った第三者の主観的態様ではなく、相手方の債権者の主観的な態様が要件とされています。

それだけでなく、債権者が知っていたことがペナルティー的な要件になりそうですが、知らなかったことが要件とされています。

これは、債務は本来履行されるべきもので、債務者の意思に反していても弁済がなされれば、それを債権者が知らなかったのであれば、そのまま保持して良いと考えているからだと思います。

ただ、債権者にとっては債務者の意思に反しているかどうかわからない場合もあるので、その場合は債権者に受領拒絶を認めています。(民法第474条第3項)

受領拒絶が認められるということは、受領しなくても受領遅滞にならないことを意味します。

このままだと、債権者は債務者の意思に反しているかどうかがわからないと言って、殆どの場合に受領拒絶することが考えられるので、第三者が債務者から委託を受けて弁済することを、債権者が知っていれば、受領拒絶できないことになっています。(民法第474条第2項但し書)

結論が二転三転するので、改めて確認すると、第三者が債務者の意思に反して弁済した場合に、例外的に有効になるのは、第三者による弁済が債務者の意思に反することについて債権者が善意の場合です。

債務者の意思に反しているかどうかわからない場合に、受領拒絶が認められないのは、第三者が債務者から委託を受けて弁済することについて、債権者が悪意の場合です。

第三者による弁済が有効となるか無効となるかの流れの中で、結論が二転に転し、しかも債権者の主観的な態様により結論が異なることになります。

各種試験でも出題される可能性がありますので、ある効果(この場合弁済が有効かどうか)についての要件が、何についての、善意なのか、悪意なのかをきちんと押さえておきましょう。

特に行政書士試験の記述式でも問われる可能性があります。